介護労働者への賃上げ?価値ある仕事に見合った報酬を!
介護労働者は、労働に見合った報酬を得られていないと感じる人が多いです。そして業界全体が慢性的な人材不足に陥っています。そこで政府主導によって労働に見合った報酬を得られるよう、さまざまな賃上げ策が講じられているのです。今回の記事では、そうした賃上げについて詳しく解説していきます。
介護労働者の大きな負荷と低い報酬
介護職員の仕事内容は、働く場所によって変わりますが、主に生活援助と身体介護に大別されています。生活援助は本人のかわりに必要な家事などを行い、利用者の快適な生活をサポートする仕事です。身体介護は、食事・排泄・入浴介助など利用者の身の回りの世話をするサポートになります。
直接対象者に触れる仕事のため、生活援助とは違い力仕事であり、対人スキルが求められる難しい仕事です。また、生活援助を行う介護職員は資格が不要なのに対して、身体介護を行うには介護職員初任者研修以上の資格が必要になります。
さらに身体介護のみを行う事業所や、生活援助と身体介護の両方を行う事業所があったりと、働く場所で業務内容は大きく違います。入所施設で働くと、寝たきりの人や病気で移動が難しい利用者への身体介助を伴う業務内容がメインとなるため、そこで働く職員の負担はかなり大きいです。
介護という仕事は、利用者をベッドへ乗せて降ろす、入浴介助のために体を支えて立たせたりする作業を1日に何十回と繰り返すため、職員の体への負担が大きいため、体を痛めてしまうことも珍しくありません。また、長年介護を続けているベテラン職員の中には、慢性的な怪我や病気を持っている人もいます。
さらに、勤務形態として早出・日勤・遅出・夜勤に分かれており、生活リズムが乱れやすい点も介護職員の体に負担がかかる原因です。介護業界は、慢性的な人手不足に陥っているため、肉体労働を強いられるにも関わらず、自由に休みが取れなかったり、残業をせざるを得ない状況が散見されています。
そんな介護職員の、介護職一般労働者の平均月給は24万円と少ないです。誰にでもできる仕事というイメージがあるためか、過酷な労働にも関わらず報酬は少ないため恵まれた処遇とは言えません。一方で管理者になれば平均月給が38万円までアップするので、昇進していけばいずれ労働に見合った報酬と言えるでしょう。
しかし、介護職員へのアンケート調査の結果からも、実際の労働に対する報酬の少なさを不満に感じている人は多いです。加えて、過度な労働への不満以外にも、利用者本人とその家族との関係にストレスを感じています。そうした点からも介護職員の賃金は、十分な報酬をもらうことができているとは言えないでしょう。
介護労働者への賃上げの必要性と効果
厚生労働省によると、介護職員全体の平均給与額は月31万6,610円です。またサービス種別によってばらつきがあり、最も給与水準が高いのは介護老人福祉施設となっています。反対に低いのは通所介護事業所であり、約7万円近く低い水準です。同じ常勤の介護職員であっても働く場所によって毎月の給与にばらつきがあります。
介護という仕事は、重労働や怪我のリスクがあるにも関わらず、賃金が安いことに不満を持つ人が多いです。介護業界の慢性的な人員不足は、業務内容に対する賃金の低さが原因の1つと言われています。また賃金が低いせいで、他業種からの流入も少なく、反対に介護業界から他業種に流失するケースも多く見られているため、介護労働者への賃上げは必要です。
賃上げの効果は多少はあり、それに対して喜びを感じている介護職員も一定数います。
賃上げの実現と社会的な支援
超高齢社会に突入した日本では、介護職員はなくてはならない職業であり、政府の資料にも他業種と同等の賃上げが必要と言われています。また慢性的な人手不足であることを解決するための一案として、政府主導で段階的な賃上げ策が行われているのです。
段階的な賃上げ策として、2017年と2019年に介護報酬の改定を行い労働条件を改善しています。2017年には、介護報酬を1.14%引き上げて、介護職員全体の賃金改善を図るための介護処遇改善加算の区分を新設し、昇給に基づく賃上げを実施したのです。
そして2019年には、処具改善加算に報酬を上乗せする特定処遇改善加算を設定しています。これはベテラン職員の処遇改善を目的としており、月平均8万円相当の賃上げまたは、年収440万円以上となるものを確保するためのものです。
そして、2022年2月から実施されているのが「介護職員等ベースアップ等支援加算」と言われるものです。これは福祉・介護職員の処遇改善のため、月の収入を3%程度引き上げることを目指したものになります。このように政府が主導となって、介護職員の給与は徐々に改善されてきています。
まとめ
介護の仕事はきつい上に賃金が安いことで、慢性的な人材不足に陥っています。超高齢化社会を迎えた日本にとって、介護人材の不足は重大な問題です。そこで政府が主導となり、まずは仕事に見合った賃金が得られるよう、さまざまな賃上げ対策が行われております。
2017年に始まった介護処遇改善加算、2019年に始まった特定処遇改善加算によって、恩恵を受ける介護職員が増えました。とくに特定処遇改善加算によって、これまで長く介護業界に貢献してきた職員の賃金が大きく改善しています。
さらに2022年に介護職員等ベースアップ等支援加算が始まったことで、さらに介護職員全体の底上げが図られたことが大きいです。今後もまだ賃上げは続く予定であるため、仕事に見合った報酬は実現していくでしょう。